弁護士コラム

個人再生・自己破産

Q:
1.いわゆるバブル期にサラリーマンの夫が住宅ローンを組んで、念願のマイホームを購入しました。ところが、バブルがはじけて夫の収入が大幅に減り、住宅ローンの支払いをすると、生活費が不足するようになったため、やむなく、銀行や消費者金融業者から借入をしたところ、雪だるま式に夫の負債が膨れ上がっていきました。その間、私も生活費の不足分を補うため、消費者金融業者などから借入して、返済と借入を繰り返す状態になってきました。
2.現在、夫の負債は住宅ローンが約2000万円、毎月の支払が10万円で、その他の借入額は合計約800万円もあり、返済月額は約20万円にもなっています。また、私の借入額は合計約400万円で返済月額は約10万円です。
3.他方、夫の月収は30万円で、私のパート収入は月額10万円です。このような状況で、なんとかマイホームを維持しつつ、私たち夫婦の負債を整理する方法はないでしょうか。

A:
1.もはや、支払不能の状態にあると思われます。夫婦共に法的手続きで債務を整理するしかないでしょう。夫は個人再生の手続、妻は自己破産の手続をとる方法が考えられます。
2.夫の個人再生の手続では、住宅ローンの支払を続けつつ、その他の負債については、大幅に減額した金額(5分の1)を3年ないし5年で返済することになります。ケースによっては住宅ローンの返済方法を組み直すこともできます。
3.妻の自己破産の手続では、一定の免責不許可事由について、特に問題がなければ、免責決定を得て、これが確定すると、借入金金額が法律上払わなくてよくなります。
4.これらの法的手続は、後ろ向きに考えるのではなく、前向きに考えてください。これまでのような、収入がほとんど返済に消えて借入金で生活をするという状況から脱却して、収入で預金して残りを生活費に充てて、老後に備えるという普通の生活に戻すために、法律が原則として1回だけチャンスをくれるのです。このチャンスをうまく活用できるか否かは法律の専門家に相談してみることが大切です。
5.なお、バブル経済崩壊の頃から高金利の消費者金融業者から借入れ、返済をしていると、利息制限法(年率15%~20%)を超えた利息の支払により、借入額が減ったり返済請求のできる過払金が発生していることがありますので、この点も相談されるとよいでしょう。

弁護士 田中宏幸