Q:マイホームのマンションも購入し、夫婦(夫45歳、妻40歳)子供二人で幸せに暮らしていたのですが、昨年秋頃から夫の様子がどうもおかしかったので、こっそり夫の携帯電話のメールを見ると、職場の若い女性Aと深い仲になっているようでした。夫を問い詰めると、夫は逆に離婚してくれと言い出しました。私はショックで子供二人(小学6年生、小学4年生)を連れて実家に戻りました。私としては子供がおりますので、身勝手な夫の要求に応じるつもりはありませんが、今後の生活が心配です。夫は生活費の支払いを渋りそうですが、この場合、夫に対して、生活費としていくら要求できるのでしょうか。夫はサラリーマンで、税込の年収は約700万円です。私は専業主婦で無収入です。マンションの住宅ローンの支払は月額10万円でボーナス払はありません。
A:夫婦は互いに協力扶助義務があり、婚姻費用(生活費)を分担します。同居している間は、さほど意識しませんが、別居すると生活費が気になるところです。
さて、この場合、生活費を要求することを、婚姻費用分担請求といいます。婚姻費用の分担については、夫婦双方の資産、収入、その他一切の事情が考慮されることになっています。最近は簡易迅速な処理のため、過去の実績等を踏まえて、いわゆる「養育費・婚姻費用の算定表」が東京家庭裁判所のホームページなどで公表されています。特別の事情がない限り、この算定表に基づいて婚姻費用を算定することが、少なくとも大阪と東京の家事調停の場で行われ定着しています。
ご質問のケースをこの算定票に当てはめてみますと、婚姻費用として月額14万円から16万円を夫に対し要求することができそうです。
もっとも、この金額はあなたの収入がゼロであることを前提にして算定表を見たのですが、実際は、子供さんの年齢からしてあなたの潜在的稼働能力、すなわち、働いて収入を得ようと思えば働ける能力があるとみて、例えばパート収入程度の年収(例えば120万円)があるものとして、前記算定表により判断されることもあります。仮にパート収入が年120万円あると仮定すると、婚姻費用として月額12万円から14万円の間で請求できることになります。
これに対して、夫から住宅ローンとして毎月10万円支払っているのだから、その分の減額を求めてくることがあります。しかし、住宅ローンにかかるマンションにあなたが住んでいる場合ならともかく、夫がそのマンションに住んでいる場合は、住宅ローンの支払は特別考慮されることは通常ありません。
上記算定表を見る場合は、子供が私立大学に通っている場合、夫の年収が2000万円を超えるような高額な場合などの「特別な事情」がある場合は、別途事案に応じた考慮がなされますので、その点は家事事件に詳しい弁護士に相談してみてください。
弁護士 田中宏幸