弁護士コラム

相続と寄与分

Q:私は父が経営していた町工場を、大学卒業後20年以上父の片腕としてわずかな給料をもらって手伝っていました。そのため、私名義の不動産や預貯金は持たず、専ら家のために働いたため、父の町工場の規模も3倍大きくなりました。
この度父が亡くなりましたが、弟たちは父の遺産である町工場を売って平等に分けるように言ってきています。この場合、私のこれまでの働きは父の相続において評価されないのでしょうか。

A:相続人の中に、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献(寄与)をした人がいる場合には、その人は遺産分割にあたって、法定相続分によって取得する額以上の遺産を取得することができます。
あなたの場合、お父さんの財産の増加に特別の貢献(寄与)をしたものと認められるかどうかです。この点、単に一緒に仕事をしてきたというだけでは寄与分が認められる可能性は低いでしょうが、給料が低額であるにもかかわらず、長時間労働をしてきたということであれば、あなたの寄与分は認められる可能性は高いでしょう。そうすると遺産の分割にあたって、あなたの寄与分が評価されますが、具体的にどれだけ多く遺産を取得できるかは、相続人間の協議で決めるのが原則です。しかし相続人間の協議が調わなかったり、協議できないときは家庭裁判所に申立をしてその額(寄与分)を定めてもらうこともできます。

弁護士 田中宏幸