弁護士コラム

おれおれ詐欺

Q:「おかあさん、おれおれ。交通事故を起こして、暴力団から損害金を要求されている。今すぐ200万円払わなかったら殺される。すぐ預金口座に振り込んでくれ。」と電話があり、慌てて振込みました。ところが、後で息子に無事だったか確認してみて初めて騙されたことに気付きました。200万円は戻ってくるのでしょうか。

A:
1.法的救済方法
当然のことですが、何もせず手をこまねいていれば永久に200万円は戻ってきません。まずは、相手方を特定する必要があります。そのためには、警察に詐欺の被害届または告訴をして犯人を捜査して特定してもらいます。
次に、相手方に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をします。場合によっては、詐欺の刑事事件になると相手方は刑事処分を軽くしてもらうためにあなたに被害弁償してくることがあります。しかし、被害弁償を受けられないときは、相手方に対して訴訟することが効果的な場合があります。訴訟内外で示談(和解)を申し入れてくることがあるからです。しかし、示談の申入れもないときは判決を出してもらい、相手方の支払いを求めるのですが、それでも支払いがないときは、強制執行をとります。具体的には、相手方の給料を差押えたり、その他相手方の財産を差押するなどして債権の回収を図ります。
2.手口の巧妙さ
法的な手続としては以上のようなことになりますが、やはり、このような高齢者を狙った「おれおれ詐欺」に引っかからないことです。この手口は、様々で巧妙になってきています。交通事故の示談金、借金返済の費用、電話の向こうで数人がグループになった、泣き声を出す息子役、金貸し役、脅し役など、名演技をする仲間がいる場合もあります。「子供に危害を加える」などと脅されると動転して冷静な判断が鈍ってしまうようです。また、他の親族には黙って振り込んでほしいと口止め工作までするケースも目立ってきています。高齢者に考える隙を与えず、信じ込ませる手口です。事前に家族構成や携帯電話番号を把握している計画犯も増えていますので、騙される確率が高くなっています。
3.予防方法
電話での求めに応じてお金を振り込まないこと
電話で自分から先に息子など肉親の名前を言わず、相手方に名乗らせるようにすること。
電話を切った後、振込前に、必ず身内に相談して事実関係を確認すること。
家族間のやり取りが乏しい人ほど騙されやすいようですので、高齢者と離れて住む家族も日頃から「おれおれ詐欺」 に注意を促し、高齢者への連絡を欠かさないこと。
被害に遭っていると思ったときは、市町村の消費者相談窓口や警察と連絡を取り合っていくべきでしょう。

弁護士 田中宏幸