弁護士コラム

賃貸不動産の相続問題⑶column

2016.04.25

Q:相続財産の中に貸しビルがあるのですが、この貸しビルを建てる際の建築資金を借入れした債務が残っています。この債務を担保するため、銀行の抵当権が貸しビルに設定してあります。この借入債務は、相続人3人のうち貸しビルを取得した長兄が承継することで相続人間で合意しました。これで何か問題あるでしょうか。

A:通常、遺産分割協議では、ご質問のように貸しビルを取得する相続人が貸しビルに関する借入債務を承継するということで、合意することが多いでしょう。しかし、相続人間での債務承継者の合意は、債権者の同意がない限り、債権者に対抗できないのです。この点は注意が必要です。
債権者の同意がないときは、被相続人の借入債務は、各相続人が法定相続分に応じて負担することになります。このため、借入債務の支払を遅延するようになると、銀行から各相続人に対して法定相続分に応じた弁済を求められることがあります。特にオーバーローンの状態(貸しビルの時価より抵当権の被担保債権の額が多い状態のこと)になっているときはなおさらです。銀行に対して借入債務の承継者に関する相続人間の合意書面を差し入れていても安心できないのです。銀行の同意書面を取っておく必要があります。

弁護士田中宏幸

06-6630-3005