弁護士コラム

借家契約の解約と「正当事由」―建物利用の必要性⑤―column

2018.07.09

Q:<建物の建替えの必要性>
借家の敷地を有効利用するために、建物の建替えの必要性があること
を理由として、借家契約の解約の「正当事由」が認められるケースがあ
るでしょうか。

A:いわゆるバブル経済の頃には、このような事案が多くありました。
特に、大都市の中心部における土地の再開発の要望が社会的に強まって
きていることを理由に、かなりの立退料の支払を条件に解約の「正当事由」
が認められたケースがありました。
例えば、池袋駅の近くの地元商店街と豊島区が協力して街づくりが行わ
れている中で、借家建物が老朽化していること、賃貸人に自社ビルを建築
する必要性があるとして、1億6000万円の立退料の支払を条件に「正
当事由」を認めた裁判例があります。
また、借家建物の老朽化、新橋駅前という土地の高度利用が望ましい立
地に借家が立地していること、他の借家人の明渡し交渉が完了しているこ
と等理由として、3億4000万円の立退料の支払を条件に、解約の「正
当事由」を認めた裁判例もあります。
いずれも、賃貸人に再開発の利益があることも考慮して、立退料が高額
化したものと思われます。

弁護士 田 中 宏 幸

06-6630-3005