弁護士コラム

特別受益column

2015.02.25

Q:先日、父が亡くなり、相続人は姉の私と弟の2人です。遺産は、①自宅の土地建物(3000万円相当)と②預金2000万円です。私は公立高校卒業後就職し、父と同居しています。他方、弟は私立大学に入学させてもらい5年前に卒業しました(学資600万円相当)。また、弟は3年前、父からマンション購入の頭金として800万円の援助を受けています。父の遺産分割に当たり、弟は折半して1人当たり2500万円で分けようと主張しています。弟が受けた学資600万円及び頭金800万円の援助は考慮されないのでしょうか。

A:現に残っている遺産5000万円相当をベースにすると、1人当たり2500万円となり、姉が自宅(3000万円相当)を取得すると代償金として500万円を弟に支払う必要が出てきます。しかし、本問の弟のように、相続人の中に、生計の資本として贈与を受けた者(特別受益者)があるときは、いわば「遺産の前渡し」を受けたものとして、遺産分割においては、その特別受益相当分を遺産に上乗せしたうえで、各相続人の具体的な相続分を算定することとされています(特別受益制度)。これは共同相続人間の不平等を是正して、実質的平等を図ることを目的としています。
 本問の場合、弟が受けた特別受益は学資600万円相当及びマンション購入の頭金800万円の合計1400万円になります。そうすると、次のように、相続財産を6400万円とみなして計算していきます。
 自宅3000万円+預金2000万円+特別受益相当分1400万円
 =6400万円
 この6400万円に姉弟の法定相続分2分の1を乗じて、一応の相続分として各々3200万円が算出されます。弟については、この3200万円から特別受益相当分1400万円を控除した1800万円が具体的相続分になります。姉の具体的相続分は上記3200万円のままです。このようにして、姉が自宅(3000万円相当)を取得しても、さらに預金200万円を取得することができ、弟との間の実質的平等を図ることができます。

弁護士 田中宏幸

06-6630-3005