弁護士コラム

遺産分割協議の進め方column

2015.03.30
Q:先月夫が80歳で亡くなりました。夫には私との間に3人の子供がいて、長男は東京、二男は静岡、長女は名古屋にそれぞれ住んでいます。夫の財産としては、一戸建の自宅(時価3000万円)、預貯金約3000万円あります。今後は遺産年金とわずかな私の国民年金とで生活していくことになり不安です。亡夫の遺産を分割しておいた方がよいでしょうか。遺産分割をする場合、どのように進めていけばよいでしょうか。

A:1.まず、遺産分割は早いうちにしておいた方がよいでしょう。確かに、遺産分割はいつまでにしなければならないという決まりはありません。しかし、これを放置しておくと、例えば、長男が不慮の事故により死亡した場合は、長男の相続人(妻・子供)が亡夫の遺産についての相続人になります。このように亡夫の遺産についての相続人が増えていくことになり、そうすると、遺産分割が必要になったとき、遺産分割の協議が複雑になってきます。(例えば、亡長男の子供が未成年者のときは特別代理人の選任が必要になります。)気心の知れた親子の間でそれぞれの実情に合わせて遺産分割の協議をしておいた方がよいでしょう。
2.次に、遺産分割は、相続人全員が協議して決めていくのが原則です。本問のように遠方にいて相続人全員が集まれる機会が少ないときは、遺産分割の案を作成した上でこれを全員が了解すればそれでも構いません。遺産分割の協議をスムーズに進めるコツは、オープンにして手続を進めることです。誰かが遺産を隠したりしていると疑われると協議はこじれがちです。まずは、亡夫の財産を全て遺産目録にリストアップして、その資料を準備します。そして、それぞれの遺産の評価額もわかる範囲でできるだけ記入していきます。遺産としては、様々なものがあります。不動産、預貯金、現金、有価証券(株式、公社債等)、債権、生命保険(受取人が被相続人の場合)、自動車、貴金属等々です。その上で、相続人全員で検討していきます。本問のような場合、亡夫の財産は夫婦で築いたものだからということで、相続人全員が了解すれば妻に全て取得させることでもよいのです。あるいは、長女が母親と同居してその面倒を見ていくということで、長女と母親に遺産を分割してもよいのです。相続人全員が了解すれば分割方法は自由です。
3.もし、相続人全員の協議がうまくいかずこじれてしまったときは、家庭裁判所に対し、遺産分割の調停申立を行います。中立の立場の調停委員2名(内一人は弁護士の場合が多い。)が適切なアドバイスをしつつ遺産分割の話し合いを進めていただけます。仮に調停が成立しなくても審判を出していただくこともできます。
4.遺産分割の協議ができたら、遺産分割協議書を相続人の人数分(本問では4部)作成し、相続人全員が署名押印(実印)して、印鑑証明書を添付しておくと、後日の紛争の防止にもなります。

弁護士 田中宏幸

06-6630-3005