弁護士コラム

遺言 ―認知症の人の場合―column

2017.10.31

Q:認知症と診断されているのですが、私としては私なりの
考えで遺言を残しておきたいのです。認知症の人が遺言を
作成する場合、将来のことを考えてやっておくことがあれ
ば教えて下さい。

A:認知症の診断を受けている場合、遺言書を作成するとき
は、次のことを行っておくことをお勧めします。
① 遺言者の普段の生活状態や会話の内容を記録すること。
例えば、ビデオを撮ったり、日記を書き残しておく等
です。
② 第三者的立場にある主治医の先生に、遺言者の状態や
発言内容をカルテに詳しく記載してもらうこと。
③ 複数の専門医に「長谷川式知能評価スケール」でテス
トしてもらい、単なる合計点のみでなく、内訳も分析し
て、認知能力・判断能力があることを確認してもらうこ
と。
④ 遺言書を作成する際には、その場に相続人や受遺者の
影響を排除するため、これらの人を同席させないこと。
そして、遺言書作成時の様子をビデオに撮っておくこと。
⑤ 遺言内容は複雑なものにせず、簡単な内容にとどめて
おくことです。

認知症の遺言者が遺言する場合は、複数の専門医に相談し
て遺言能力の有無を確認しておくことです。もし、遺言者と
の会話がほとんど成り立たない場合は、遺言書作成を断念す
ることも、後日の紛争を避けるため必要なことです。

弁護士  田 中 宏 幸

06-6630-3005