弁護士コラム

借家契約の解約と「正当事由」-建物利用の必要性②-column

2018.06.08

Q:「正当事由」の主要な要素として「建物利用の必要性」が挙げられて
いますが、その類型の1つである「賃貸人が自己あるいは家族の居住と
して使用する必要がある場合」について、教えて下さい。

A:1 賃貸人が建物を自己の住居として使用する必要性がある場合は、
「正当事由」が比較的認められやすい傾向にあるといえるでしょう。
例えば、賃貸人が大阪で公務員官舎に居住していて、定年退職し、
再就職先が東京の会社である場合、東京にある賃貸建物に住居として
使用する必要性が認められます。この場合、一定の立退料の支払を条
件に「正当事由」が認められることになるでしょう。
2 賃貸人の家族が住居として使用する必要性がある場合は、賃貸人自
身が住居として使用する場合よりも「正当事由」としては若干低く評
価されるかと思われます。
例えば、大阪にある賃貸建物の隣に高齢の賃貸人が居住していて、
賃貸人の長女が夫の転職により大阪で勤務する機会に、長女が高齢の
賃貸人の介護を行うため、賃貸建物に住居として使用する必要性は認
められるでしょう。ただし、建物使用の必要性は賃貸人自身の建物使
用の必要性より、低い評価になるかと思われます。
3 以上のように、自己使用の場合と家族使用の場合では、必要性の程
度に若干の強弱があるように思わます。

弁護士 田 中 宏 幸

06-6630-3005