弁護士コラム

借家契約の解約と「正当事由」-建物利用の必要性①-column

2018.05.30

Q:「正当事由」の主要な要素として、「建物利用の必要性」が挙げられ
ていますが、具体的にはどのような点が判断されるのですか。

A:1 まず、賃貸人の自己使用の必要性を類型化してみますと次の三つに
類型化できるでしょう。
① 賃貸人が自己あるいは家族の住居として使用する必要がある場合
② 賃貸人が何らかの事業のために使用する必要がある場合
③ 賃貸人が建物を建て替える必要がある場合(土地の有効利用の必
要性)
2  次に、賃借人の使用の必要性としては、① 賃借人の居住の必要性
に限りません。② 賃借人がその建物に営業上の資本を投下している
場合(店舗として改装している場合等)やその建物で営業を継続す
る必要がある場合(生活の糧として営業している場合等)が挙げら
れます。
3  そして、① これらの賃貸人・賃借人双方の建物利用の必要性に著
しい差が認められる場合、すなわち、賃貸人の建物利用の必要性が
賃借人のそれをかなり上回っている場合には、それだけで「正当事
由」が認められることがあります。
② もし、賃貸人・賃借人双方の建物の利用の必要性に著しい差が認
められない場合は、立退料の提供、代替家屋の提供等の補完的要素が
考慮されることになります。
③ 上記①とは逆に、賃借人の建物利用の必要性が相当高い場合には、
立退料の提供等の補完的要素があっても、「正当事由」は認められな
いことがあります。
弁護士 田 中 宏 幸

06-6630-3005