弁護士コラム

離島事情と遺産分割法制度column

2014.07.12

年二回の離島法律相談会・講演会を今年も行ってきました。
15回目になります。
今回は5月下旬に南大東島と北大東島。
沖縄からさらに東に空路390キロメートル。
サンゴでできた島です。

そこでの講演は「相続と遺言」のタイトルで行いました。
その後の法律相談会では南北合わせて、25件の法律相談がありました。
その際に興味深い話がありました。

島の産業は農業で農地は収入資源ですので、
父親が死亡したときに妻子が農地を分割することはないということでした。
あり得ないということでした。先祖の墓を引き継ぐものが畑地を引き継ぐということです。
民法が法定相続分を規定していることは、この島には当てはまらないということを強調されていました。
島の皆さんが全員そのような考えで生きているからということでした。
島の慣習ということでしょうか。

確かに、農地を何人かの相続人で分け合うと、農業が成り立っていかないのでしょう。
民法は全国一律に適用されますから、もし、南大東島を離れた人が法定相続分を要求したときは、遺産分割協議は荒れてしまうこと必定です。
遺産分割はその親族の実情に合わせて話し合えることが一番です。
そのため民法は遺産分割はまず相続人の「協議」で決めることを原則としているのですね。
協議の大切さが良くわかった出来事でした。

田中宏幸法律事務所
弁護士 田中宏幸

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