弁護士コラム

遺言内容と異なる遺産分割協議の可否column

2017.12.11

Q:父が死亡した後、相続人3人(長男・二男・長女)で遺産を等分に
分ける話をしていたところ、父の公正証書遺言があることが判かりま
した。この遺言内容では、長男により多くの遺産を相続させることが
記載されていました。兄弟3人は父の遺言と異って等分に遺産分割し
たいのですが、可能でしょうか。

A:この問題は議論の分かれるところがあるかと思います。
確かに、遺言内容は相続人を拘束するため、遺言内容と異なる遺産
分割協議はできないと考えることもできるでしょう。
しかし、遺言者の意思と相続人(受遺者を含む)全員の意思が明ら
かに異なる場合に、遺言者の意思をそのまま認めて、残された相続人
全員の意思とは異なった分け方をすることが相当であるのかについて
は、疑問があります。なぜなら、結局は相続人間での贈与や交換の合
意により、当初の相続人全員の意思に従った内容を実現することがで
きるのですから、遺言者の意思の実現に固執する理由があるとは思え
ないからです。
また、「遺贈」の場合には受遺者が遺贈を放棄することができるの
と同様、「相続させる」という遺言の場合にも、相続人が遺産を放棄
することができると解し、改めて相続人全員で遺産分割協議をするこ
ともできるでしょう。
従って、相続人全員及び受遺者全員が、遺言と異なる遺産分割協議
を成立させた場合に、これをあえて無効とする必要はないと考えます。
なお、遺言執行者が指定されている場合は、相続人全員が遺産分割
協議に同意しているのに、あえて遺産分割協議を否定することはでき
ないと考えます。確かに、遺言執行者は遺言内容を執行する一切の権
利義務がありますが、他方、相続人の代理人という立場にあるからで
す。
以上より、兄弟3人は、遺言内容と異なり、等分に分ける遺産分割
協議は可能と考えます。

弁護士 田 中 宏 幸

06-6630-3005