弁護士コラム

遺言書作成の際の注意点column

2018.04.23

Q 遺言書を作成しようと思うのですが、その際注意すべき点があり
ましたら教えて下さい。

A 1 遺言書の内容について
ア 遺産はできるだけ特定して、各遺産ごとに誰に帰属させる(ex.
相続させる)かを明確にしておくことです。これが不明確ですと、
あなたの意思が反映されず、遺言内容の解釈をめぐって争いの恐
れが生じるからです。
イ 遺産の一部だけの遺言はお勧めできません。遺言書の対象外の
遺産があると、それをめぐって相続人間で争いになる恐れがある
からです。
ウ 遺言書で全ての遺産をカバーするためには、「その他一切の財産」
の帰属先を決めておくことです。気付いていない預貯金などをここ
に含めることができるからです。
エ 相続人の間では、できるだけ法定相続分に近い内容を原則とする
ことです。もし、相続人の間で取得財産に大差を設ける場合は、「
附言事項」において、その理由を記載しておくことです。この場合
でも、遺留分(法定相続分の2分の1等)を下回わることになる相
続人が出ないように配慮することです。遺留分を下回わる財産しか
取得できない相続人が出ると、遺留分減殺請求権の行使ということ
で相続人間で争いになるリスクがあるからです。ただし、遺留分が
どれくらいになるかを判断することは、少々難しい面がありますの
ので、弁護士に相談することをお勧めします。

A 2 遺言書の内容以外の点について
ア 例えば、同居している子供に対しては、別居していて、盆・正月
にしか実家に来ない子供の不満を述べる一方で、別居している子供
に対しては、盆・正月に実家に来たときに、同居している子供の不
満を述べるということは、ときどき耳にすることですが、このよう
なことは決して行わないようにして下さい。相続の際に子供同士の
争いの元になる恐れがあるからです。
イ 例えば、株や投資信託などで大きな利益を得たことだけを子供た
ちに話をし、大きな損失を出したことは話さないなど、子供たちに
財産が多くあるかのような話はしないことです。あなたが亡くなっ
た後、遺産が少ないとき、あなたと同居している子供があなたの財
産を取り込んでいるのではないかと疑われやすくなり、争いの火種
になる恐れがあるからです。
ウ 遺言書作成の際、子供の一人を関与させることはできるだけしな
い方がよいです。遺言書作成に関与していない他の子供が不公平感
を抱く原因になり得るからです。

以上のように、遺言書作成時の注意点を述べましたが、折角遺言書を
作るのですから、子供たちが争いにならないよう配慮してあげて下さい。

弁護士 田 中 宏 幸

06-6630-3005