弁護士コラム

立証困難な寄与分(金銭出資型)の立証方法column

2018.04.09

Q:農家の跡取りとして、大学卒業後、公立小学校の教員となり、給与収
入の大半は母親に手渡してきました。26歳のときに別の農家の二男を養
子として迎え入れ、その夫の収入で食費以外の夫婦親子5人の支出をま
かなってきました。私の収入の大半は従前通り両親が死亡するまで母親
に手渡してきました。
父が亡くなり、(父の預貯金はなし)、その後、母が亡くなったので
すが、驚いたことに亡母名義で5000万円もの預貯金が残っていました。
父母の農業収入は基本的には赤字状態に近く、父母の年金収入も二人
合わせて月額10数万円程度でした。
亡母の相続人は、私たち夫婦と妹の3人で、妹は5000万円を三等分す
ることを要求しています。
亡母名義の預貯金5000万円は、私が長年父母に手渡ししていた給与収
入が蓄積されたものであるのは間違いないのですが、これをどのように
証明すればよいでしょうか。

A:長年給与収入を母に手渡ししていたことから、これを証明できるのは
あなたの夫くらいでしょうが、夫の供述で直ちに信用してもらうことに
は困難を伴ないます。また、毎月いくら金額を手渡ししていたかも立証
が必要ですが、これも困難を伴ないます。
そこで、① 母親の通帳等から母親の年金収入と支出を過去に遡って洗
い出すこと
② 農業収入及び年金収入が使われているのか否かをチェックすること
③ 母の預金がどのように増えていっているかを各年毎にチェックすること
④ あなたの給与収入がどれ位あったのかを、過去に遡って給与明細ある
いは源泉徴収票、課税証明書などで明らかにしていくこと、(また、
毎月の給与収入から払戻しをしている金額もチェックすること)
⑤ これらのデータを時系列にして一覧表にしてみること
このような地道な作業によって、亡母名義の預貯金が増えていく実態
を明らかにしていくことになります。
すなわち、亡母の収入では預貯金が5000万円も蓄積できないこと、亡
母はあなたの給与収入を得ているからこそ、亡母の預貯金が増えているこ
とをできるだけ過去に遡ってデータを積み上げていくことに尽きます。

弁護士 田 中 宏 幸

06-6630-3005