弁護士コラム

借家契約の解約と「正当事由」―立退料⑥―column

2018.10.22

Q:立退料が問題となった裁判はいろいろあるかと思うのですが、
立退料の算定方法としてどういう傾向にあるのでしょうか。

A:裁判例では、不動産鑑定評価基準に規定されている借家権価
格の算定方法が、必ずしもそのまま立退料の算定に使用されて
いるわけではありません。借家権価格を立退料算定に入れるこ
とを否定している裁判例もあります。
一般的には、建物が老朽化していて建替えの必要性が高い場
合や賃貸人の建物使用の必要性が高い場合には、立退料の金額
は低く抑えられる傾向にあります。
他方、賃借人による建物使用の必要性が高い場合や賃貸人に
よる建物使用の差し迫った必要性が低い場合には、立退料の金
額が高くなる傾向にあります。
具体的には、賃借人に対し提示する立退料を検討するにあた
っては、借家権価格を定型的に決めるのではなく、建物の老朽
化の程度等を調査した上で、賃借人から建物を必要とする事情
について詳細に情報を把握する必要があります。

弁護士 田 中 宏 幸

06-6630-3005